農業と太陽光発電を同時に行えるソーラーシェアリングとは一体どうのようなものでしょうか?
通常の太陽光発電と比較しながら見ていきたいと思います。
皆さんがよく目にする、通常の太陽光発電(野立て)は、太陽光を最大限利用するため、光が逃げないように、地面に近い位置に太陽光パネルを隙間なく敷き詰めています。
通常の太陽光発電(野立ての場合).
ソーラーシェアリング
それに対して、ソーラーシェアリングは、畑の上部2~3mの高い位置に太陽光パネルを設置します。なぜ高い位置に設置するかと言いますと、トラクターなどの耕作機械を入れるためです。
そして、ソーラーシェアリングは、通常に比べて太陽光パネルの幅が狭く、隣のパネルとの間に間隔をあけて、太陽光が畑(地面)に入るように設置します。
この畑(地面)に入る太陽光を農作物の生育(光合成)のために使います。地面に入る光の量は、後でご説明する農作物の「光飽和点」によって決められます。
このように、太陽光(ソーラー)を、「発電」と「農業」で分け合って(シェアして)利用することから、ソーラーシェアリングと呼ばれています。
ソーラーシェアリングを行う農家は、太陽光パネルによる売電収入により安定した農業経営が行えます。さらには、売電収入を、農作物の品質向上に充てることも可能です。
目次
「太陽光パネルの影」が農作物に悪影響を及ぼさないの?
ソーラーシェアリングでは、太陽光を「農業」と「発電」の2つの用途に分け合って利用します。しかし農作物は、「光合成」により太陽光を使ってCO2を分解して成長します。
そこで・・・
太陽光パネルの影で、農作物の生育に悪影響が出るのでは?
と思う少なくないと思います。そんな疑問にお答えしたいと思います。
農作物の成長に必要な太陽光の上限「光飽和点」とは?
農作物を含めたほとんどの植物は、成長過程で太陽光とCO2を使って「光合成」を行います。光合成によりCO2を分解して「栄養」に変換し成長する仕組みです。太陽光は農作物の成長のためには必要不可欠です。
しかし、ほとんどの植物において、光合成で利用できる太陽光の量には、上限がありこれを「光飽和点」と呼びます。この光飽和点を超えた分の太陽光は、光合成(成長)には使われません。
各種植物の光飽和点 出典:CHO技術研究所
ソーラーシェアリングは、「光飽和点」を超えた分の「余った太陽光」を活用します
ソーラーシェアリングでは、この光飽和点を超えた分の「余った太陽光」を発電に使用するので、農作物の生育には影響しません。太陽光は多ければ良いわけではありません。光飽和点を超えた強い太陽光が照りつけると、場合によっては農作物に悪影響を及ぼすこともあります。
「太陽光パネルの影」は、太陽とともに移動するので農作物の生育に影響ありません
「太陽光パネルの影」についても、「日の出」から「日の入り」まで太陽の移動に合わせて、影の位置も移動します。影が一カ所に集中することはないので、農作物への悪影響はありません。
これまでの実績でも農作物の成長速度に違いはありません。
これまで様々な農作物でソーラーシェアリングによる栽培が試みられてきました。それらの実績からも、「光飽和点」を考慮し適切に設置されたソーラーシェアリングでは、農作物の生長速度に違いは見られないことが分かっています。
太陽光パネルが農作物の「高温障害」を防ぐ場合もあります。
逆に太陽光パネルが、農作物の生長に良い影響を与える事例もあります。農作物にとって、過剰な太陽光は害となり高温障害を起こす場合があります。太陽光パネルによる適度な日陰が農作物の「高温障害」を防ぐ事例も確認されています。
ソーラーシェアリングでは、電気料金による「売電収入」を農業経営の改善に役立てられます
ソーラーシェアリングでは、売電収入があるので経営の安定化が期待できます。毎月の売電収入は、予測が立てられるので、長期展望に立って経営の改善に役立てられることが期待できます。
ソーラーシェアリングを行うためには、農地の一時転用手続きが必要です。
また農地の種類によっては、ソーラーシェアリングが難しい場合もあるので注意が必要です。
ソーラーシェアリングの法的手続きにつきましては、今後の別の記事でご紹介したいと思います。